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| 評判の入院患者 人の振り見て… |
発病から入院まで | 救急病院はこんな所 | リハビリのため転院 | 評判の入院患者
本格リハ・PT | 悲願のリハ・OT | リハ病院の四季 | 退院し独り暮らし |
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| ●愉快な仲間・患者F |
◆患者・Fは病院一の有名人で、彼を主人公にドラマが一本作れるほどだ。
Fは「今度、下の娘が結婚するので・・・」と誰彼かまわず話しかけ、自分のプライバシーをさらけ出し、「という訳で女房には頭が上がらんのですよ」と結ぶ。見舞いに訪れたFの奥方を目にして、初対面にもかかわらず思わず微笑みかけてしまったのはニキトだけではないはずだ。
ニキトとは冗談ばかり言い合っていたのだが、話術巧みなFの話は家族にとどまらず人生訓にまで及ぶらしくて、隠れた「F教信者」が大勢いたらしい。
自分を保養所の泊り客と認識しているFは、夕方になると「家に帰る」と荷造りしてはスタッフを困らせた。
ある日最寄り駅から病院に電話があった。帰宅すべく病院を抜け出したFは電車賃を持たなかった。所持品はレジ袋ひとつ。中身は彼の洗濯物だった。
それ以降彼の背中には「この人を病院以外で見かけた人は***に電話してください」とかかれたタグを縫いつけられたのだった。
Fが突然暴れ出す時があった。正気に返った瞬間に言いようのない怒りが溢れ出すのだ。彼はバイクで信号待ちをしていて、クルマに追突され負傷した。Fに落ち度はまったくなかったという。
その後、主治医も驚くほどの回復を見せたFはニキトよりも数週間早く退院していった。
不思議なカリスマ性を持ったFがニキトの記憶から消えることはないだろう。
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| ●患者の心理 |
◆「この世で一番不幸なのは自分だ」と患者の誰もが思っている。それゆえ自分より重そうな患者にはやさしくなれるのだが、逆の相手には理由のない憎しみを感じてしまうのが患者の心理だ。
リハ病院で上手に歩いている患者は、憎悪の視線を体中に浴びることになる。「転べ、つまずけ!」の声なき声が聞こえるようになれば、退院の日は近い。
◆脳血管障害は、オカシナ人からアブナイ患者まで作り出す。エピソードに不自由はしないが、それらは封印しておく。病気がなせる業なのだから。
入院生活にストレスはないのか?答えはノーだ。「心理カウンセラーがいたらいいのに」とニキトは何度も思った。病院側はMSWにその役割を求めたようだが無理があった。
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| ●スタッフ受け |
脳卒中で倒れた夫をかいがいしく世話する妻とか、祖父の様子に小さな胸を痛める孫の姿などはスタッフ受けする。頻繁に見舞いに訪れてスタッフと言葉を交わすようになり、感謝のしるし(付届け)を渡せば、患者への待遇は格別に良くなる。「あなたがいないと困る」との家族の思いは、スタッフにも届く。
病院近くの旅館に泊まりこみで、連日朝から夜まで夫の世話をする老婦人がいた。「患者が自分で何もしないのは、リハビリの妨げになる」と医師に諭されて、面会は週に1回に減った。
見舞い客のいない「島流し患者」は冷遇される。帰りを待つ人が誰もいないなら退院が遅れても支障はないだろうと、励ましの言葉さえスタッフはかけなくなるのだ。
島流し状態のある患者は体の不調をナースに訴えた。しかし主治医はほったらかしのまま。かれの抗議にナースは「ちゃんと先生に伝えました」と答えていた。
*付け届け まともな病院なら「一切無用。受け取らない」と掲示してある。しかし、「人目がある所では…」の但し書きが隠されていると解釈したほうがよろしい。スタッフの詰め所に直接行き手渡せばたいていは受け取るらしい。あるいは宅配便で送りつけるという手もある。某病院のエレベータで警備員と乗り合わせたことがある。彼は両手で抱えきれないほどの贈答品の包みを医局の方へ運んで行った。「貰い慣れてるから、よっぽどの物じゃなきゃやめたほうがいい」これは医師への謝礼についてナースの助言。
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| ●不愉快な同室者・患者H |
◆このリハ病院の患者は、寝たきりから「どこが悪いの?」と尋ねたくなるほど元気な人まで多種多様で、障害状況もさまざまだった。在院一年は少なからず、三年の猛者(?)もいた。そうした患者たちは、国政選挙の折には病院内の投票所で「不在者投票」ができた。
病室は個室もあったが、大半は6〜7人の大部屋だった。患者は症状でレベル分けされ、部屋割りされた。しかしニキトも経験したが、ベッドに空きがないと寝たきり患者の中に放り込まれて、食事しながら隣のオムツ交換作業を見学する羽目になる。
ニキトは一時期、毎深夜となりの患者の体位交換のとばっちりで安眠できない日々を過ごした。
長く病院にいるのは精神的に良くない。
◆退院前の二ヶ月間、一階にある日当たり良好の通称「退院部屋」に移ったのだが、同室の患者・Hはニキトを目の敵にした。「親の敵」を見るような視線でニキトの生活騒音に散々文句をつけた。その上「あいつは…」と聞こえよがしの悪口をスタッフと交わした。やがては面と向かってニキトに「このオカマ野郎(?)」と罵倒するのだった。
ニキトは不愉快だったが無視した。Hの恨みを買う心当たりはまったくなかった。
Hは脳卒中ではなかった。車椅子だが両手に障害はなかった。家を離れて数多の病院を転々とし、回復の望みも捨てたらしくて、訓練(PT)も休み勝ちだった。
言わばプロの患者(?)で、この退院部屋を牛耳っていた。「微風に触れても痛みを感じる」中枢神経の症状がある。隣室のエアコンにまで文句を言うのだから、真夏になっても病室の冷房を入れさせなかった。ニキトも含めて誰も抗議しなかった。
そんな中、ある患者が暑さのために発作を起こした。その後は冷房が入りニキトはほっとした。
それやこれやで、Hは別の部屋に移された。ニキト苛めはHの暇つぶしとしか思えない。
*体位交換:長時間同じ姿勢で寝ていると、マヒのため血行不良も重なり「床ずれ」になる。自分で寝返りを打てない患者のため、数時間おきに看護助手チームが姿勢を変える。じゃまなベッド柵などを外すのだが、他の患者への遠慮も配慮も皆無。騒々しいことこの上ない。
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| ●患者とスタッフ |
◆患者Hは異色だった。たいていの患者なら目をつぶるようなスタッフのミスに目くじらを立て、責任者にまで謝罪させていた。彼から怒鳴りつけられたスタッフは少なくない。病院一の嫌われ者Hはすったもんだの末に部屋替えになったが、喜んだのはスタッフだけではなかった。
Hの「あんたらの基準で患者を扱うな」は正論だった。看護助手(看助さんと呼んだ)はナースよりも仕事量が多い。常にウオームアップした状態で室温を管理するから、患者はたまらない。暑さ寒さを自分の感覚で議論するから当然もめる。温度・湿度計で数量的に捉えれば結論はすぐに出る。室温しかり、浴槽の湯の温度しかり。ニキトは幾度も温度計の設置を提案したが、実現しなかった。
ニキトに言わせれば「やりっぱなし」が困る。掃除の時は真冬でも窓を全開にし、そのまま他所へ行く。自由に歩ける患者ばかりなら、窓を閉めるのは造作もないことだが、1メートル先が10メートルにも感じられる人たちなのだ。スタッフの機嫌を損ねてはと患者は何も言わない。
性格の曲がった看助は仕返しに出る。夜中にトイレに行こうとしたニキトは、自分の車椅子が入り口近くにあるのを見て「やられた」と口走ったのだった。
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| ●家族の心得 |
(1)可能な限り患者を見舞い「スタッフ受け」を良くしましょう。
(2)リハに同席し訓練法をマスターしましょう。
セラピストが指導してくれる病院もある。退院後に家庭でも簡単なリハが出来れば理想的です。
(3)はがきとテレフォンカードは患者の常備品。補充を忘れないようにしましょう。
・携帯電話は持ち込み禁止なので、公衆電話を使うしかない。市外通話でちょっと話すと残度数は眼を疑ほど。
・気分転換とリハをかねて、定期的にはがきを書くように患者に頼みましょう。回復のバロメーターになります。
(4)後遺症から患者は感情の起伏が激しくなるので心して対応しましょう。
脳梗塞になった某芸能人が復帰の記者会見で、後ろを向いて涙をこらえるシーンがTVで放映されたことがあった。子供について質問し彼を涙ぐませた芸能記者は「インタビューの達人」ともてはやされたが、それは誤りだ。彼の心の波長と同調しさえすれば、飼い犬だろうと庭の草木だろうと同じ結果が見られたのだ。いい年をした大の大人が「帰っちゃいやだ」と見舞いにきた妻にすがって泣き叫ぶ姿をニキトは病院で幾度も目撃している。
かく言うニキトも島流し状態にした親戚夫婦をなじるつもりが、自分の言葉が引き金になって涙をぬぐった経験があるのだ。
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