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| 救急病院はこんな所 脳卒中なら長居は禁物 |
発病から入院まで | 救急病院はこんな所 | リハビリのため転院 | 評判の入院患者
本格リハ・PT | 悲願のリハ・OT | リハ病院の四季 | 退院し独り暮らし |
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| ●1999年8月30日(月) 「針のムシロ」〜救急病院でニキトは |
◆ICUからほぼ一週間ぶりで脳外科病棟に移った。
事故による頭部損傷患者が大半で、ニキトと同じ脳卒中患者は少なかった。
同室に若い外国人の患者がいた。彼は納得しないと注射一本打たせない。医師を呼びつけ次々に質問し、延々と説明させるのだった。
ニキトは「インフォームドコンセント」の見本を目撃してそのガイジンに感心した。
まねした彼は症状の説明を医師に求めたが、あっさりと無視された。取り次いだナースは「昨日家族の方に説明したとおっしゃってます」と言う。独り暮らしのニキトに面会に来る家族はいない。
患者の取り違えをしたこの医師もニキトからは信頼されなかった。
◆入院一ヶ月頃から「転院先は?いつ?」と巡回ナースが出てゆけと言わんばかりに彼に毎晩問いただす。
ナース主任はニキトを虐待した。便意を感じてコールしたら「忙しいのに呼ばないで!」とオマルを放るとか、彼が苦労して着替えたシャツを「後ろ前よ」とむしり取り、着せもせずに薄笑いしながら見ている等々。
主任にしてこの調子だから、看護助手はもっとひどい。シビンの尿を彼のシーツにこぼしても「拭いておいてネ」で去る。
ある夜、騒々しさに眼を覚ますと近くの病床カーテンに心臓マッサージする影絵が映る。死と隣り合わせの救急病院。長居しても良いことなど何もない。
*インフォームドコンセント Informede(情報を与えられた) consent(同意) 患者は医師から十分な説明を受けた上で、治療に同意すること。
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| ●転院のすすめ |
(1)物理的な問題。本格的リハには広い場所が必要。救急病院はスペース的に無理。
(2)制度上の問題。リハにはPT・OT・STがあるが、3科揃った救急病院は稀。長居してOTをしないとニキトのように隻手になる。
(3)心理的な問題。周囲から怪我人のうめき声が夜通し聞こえてくる。ニキトは中枢神経のマヒで歩けないのに、手脚の怪我と錯覚して歩行訓練に支障をきたした。
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| ●早いほど効くリハ |
◆ニキトの経験論では「リハは早いほど効く」。リハ病院には毎日のように、脳卒中患者が入院するが、めざましい進歩を遂げるのは発病してから2〜3週間の患者たちだった。病状が一段落したら、家族はリハ病院探しをはじめるべきなのだ。(病院の選び方は次章)
◆リハをはじめる時期と同じくらいに大切なのは、患者本人の「やる気と根気」です。「妻子の将来を思えばのんびり寝てなどいられない」と、勝手に歩こうとしてナースに支えられてベッドに連れ戻されるような患者は、驚異的な速度で歩けるようになる。それに比べて、見るからに楽隠居といった老人は進歩が遅い。今様で言うところのモチベーションの相違でしょう。
*モチベーション (Motivation) 動機付け。
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| ●1999年9月8日(水) 「今の急性期治療」〜リハ開始 |
◆脳外病棟に移って程なく、ニキトのリハビリが始まった。過去の急性期治療はベッドで安静が常識だったが、現在では早い時期から患者を運動させる。クリニカルパスを取り入れ、退院まで二ヶ月コースもあると聞いた。
車椅子で訓練室に運ばれた彼は「傾斜台」にセット(?)され、仰臥から徐々に立位に近づき、重力を体で感じる。初日は軽い立ちくらみを感じて訓練は終った。
担当のPTは「よろけて潰しはしまいか」とニキトが心配するほど小柄な女性だった。ある日「男の先生だったら歩けます」と言われ、男性PTと交代したら、数歩だが歩けたのだった。
担当医師からは温泉病院への転院を勧められたが、12月の資格試験に申し込み済みだったニキトは「都落ち」するのを嫌がった。都内でのリハをと願いこだわり続けた結果が、彼を隻手にした。もし、救急病院での約三ヶ月間にOTをしていたら・・・。言葉に障害のないニキトにSTは無用だが、OTは必要だった。しかし入院していた病院にOTがなかったのが、彼には不運だった。
医師もその点をまったく説明しなかった。さらに言えば彼と会話したことすらない。
「週1の入浴と毎日の訓練は何があっても休まない」と宣言した彼のPTは順調に進み、弾性包帯で足首を固定し、杖をついて院内を歩けるまでになった。
「次は手だ」がニキトの転院の目標になった。
*クリニカルパス (Clinical Path): 入院時に退院までのスケジュールや経費がわかる仕組みで、クリティカルパスが医療現場へ転用されたもの。
*クリティカルパス (Critical Path 臨界経路法)1950年代にアメリカの原子力潜水艦製造で編み出された工程管理技法で最小の時間と費用で最大の効果を求める。
*急性期 (臥床期)発病後の1週間をこう呼ぶ。救急処置、内科外科的治療。リハはベッドサイド。
回復期 (離床移行期)症状が安定する時期の3ヶ月ほど。リハはPT、OT室で行う。訓練効果は右肩上がり。
維持期 (固定期)リハで取り戻した身体機能を維持する。
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| ●リハビリとは |
◆リハビリテェーション(Rehabilitation)略して「リハビリ」。「リハ」とか「訓練」と呼ぶ時もある。
言葉の解釈は Re(再)+ habiliss(適した)+ ation(状態にすること)だが、その中身が問題。
患者も家族も「元の身体に戻りたい」と損なわれた機能の回復を願い,つらい訓練に励むのだが、医師も療法士も失われた機能は修復できないので「残された機能を最大限に生かすための訓練」と位置付けている。残念ながら双方の目標設定には大きな隔たりがある。
◆Q「もし医師国家試験を目前にして、右手をケガして鉛筆を握れなくなったらどうします?」A「無事なほうの手で楕円を塗りつぶす訓練をすればいいのです。それがリハビリテェーションの基本です」
某医大サイトの「リハ科研修医募集」のページでこれを発見したニキトはショックを受けた。国家試験がマークシートにも驚いたが、「リハビリテェーションは残存機能を活用すること」と定義する姿勢には真っ向から異論を唱えたかった。
とりあえずの日常生活にはこの程度で困らないだろう。しかしそれでリハビリテェーションの責任を果たしたと決め付けられては困るのだ。
失ったのは機能で、手脚ではない。断線(?)した神経回路を迂回して(バイパス)繋げば、動くのではないか?研究が足りないと言いたい。医を生計の手段と考えるからそうなる。患者がどう思おうと、高級外車に乗れるのだから彼らは茨の道に入り込もうとはしない。これが人情か?。
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| ●PT・OT・STとは |
PT/OT/STは脳卒中の三大リハビリテェーション。
●PT(Physical Therapy): 理学療法。脚の訓練と呼ぶのは厳密には間違い。
●OT(Occupetional Therapy): 作業療法。手の訓練に限らない。
●ST(Speach Therapy): 言語聴覚療法。言葉が出ない、意味不明音になるなどの治療。
*T=Terapy(療法) と =Terapist(療法士)の両方の意味で使われるのでご注意。
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